どうしよう、4月1日に親会社の監査法人の会計士が現金実査と棚卸実査に来て、うちの試算表と預金の残高を突合するって言ってきたよ、今日は3月31日だけど、明日の朝までに現預金勘定の仕訳全部切って合わせるのは間に合わないよ!いつも2、3日がかりで仕訳切ってやっと残高が合うのに!」
「大丈夫、本気で集中すればきっとできるはず!」
その日は忘れられない1日になりました。中小企業でも、大企業の子会社の場合、監査法人による子会社監査が入ることがあるんです。もちろん4月1日に来ることは、もっと前から通知はされていました。しかしまさか3月31日に電話がかかってきて「明日、現預金の試算表も見たいからよろしく(もちろん帳簿残高と口座残高合わせとけよ)」と言われるなんて思ってもいませんでした。思わず「え、金庫のお金と現金出納帳を見るだけじゃないんですか?4月1日の朝に試算表見るんですか?」と聞き返したら、「ええ、試算表よろしく」と言われたのです。すごいプレッシャーです。小さい会社だからそんなのすぐできるだろうみたいな言い方されました。
今考えても、むちゃくちゃです。大きな会社でも、現預金の帳簿残高確定がそんなにすぐにできるはずがありません。
うちの会社では営業部員の経費清算を月末つまり3月31日にやっていました。10数人分の現金清算に一人で応対していたのです。手元金庫からお金を必死で数えて、一人ずつお金を渡していきました。今は清算は月末をずらしてやるようにしましたが、当時はあらゆる清算・決済処理が月末に集中しておりました。
合間を縫って、銀行から毎日送られてくる残高明細のFAXの束をめくりながら、当座預金の仕訳をひたすら入力し続けました。奇跡的に、当座預金の仕訳が全て入り、残高も合いました。その時は絶好調でした。銀行の行員はよく午後15時になって取引が終了してからやっと仕事が始まるという話を聞きますが、遅くまで残って仕事したくない企業側も意地で15時の取引終了までにリアルタイムで当座預金の仕訳を全て入れ込んで残高会うように必死のパッチでやってます。
こういう作業をやる時、ある意味一人で全部やると、大変ですが終わるのは早いです。他の人がやってくれたのをチェックしながら処理してたら、なかなかこうはいかないと思います。
続いて、現金の仕訳を行います。この時点で、集中力は残り5%を切っています。もはや手が動くのみで、頭で考えられる時間を過ぎています。営業部員が申請してきた交通費が間違っていても、経理の伝家の宝刀、秘密の奥儀、慈悲の女神こと「重要性の原則」が、私に微笑んでくれるはずです。
18時を過ぎて、大詰めに差し掛かった頃、人々が帰る準備をし始めたため、手元金庫を閉め切って大金庫に戻そうと、あわてて現金を数えました。
すると、
1000円足りない・・・!?!?!?
何度数えても、何度数えても、足りない・・・orz
私はこの1年間何をやってきたんだろうとさえ思いました。結局、3月31日の現金出納帳の最後の一行は、「現金過不足」と書かれ、仕訳の相手勘定は「雑損失」として、翌日、監査の現金実査に挑むことになってしまったのでした・・・。監査に来た会計士に、あまり深くは突っ込まれなかったのは幸いでした。
たかが1000円、と思い、一瞬、自分の財布に手をのばしかけましたが、されど1000円です。正直に上司に報告することが、最善の方法だと思います。
ちなみに銀行では、コンプライアンスが非常に厳しいのでたとえ10円や5円の残高が合わない時でも行員がポケットマネーで補充したりすることは絶対にできないようですね。ただし、表向きにはそのようになっていても、机や棚を動かした時、あるはずのないお金がひょっこり出てきたりするらしいですけどね・・・