どうモメンです。経理職として働いています。
気になるコラムニスト山崎元の扇動的なタイトルの記事について、色々思うところがあったので、記事を投稿します。
この山崎氏のコラムは、会社で仕事中に読んでいて、「この内容、この文章、著者はひょっとして・・・」と思ったのを覚えています。どういうわけか、山崎氏のコラムは私の脳のレセプトがつい反応してしまうようです。
私は学生の頃、就職活動で非常に苦労した人間です。絶望の底にタッチして1年間近く浮上できなくなった状態さえ経験しています。
そこまで追いやられてまで、頑なにこだわった仕事への条件がありました。
私は大学では経営学を専攻しており、ゼミなども金融業界と縁があるところでした。卒業してだいぶ経ちましたが、わりと最近まで金融業界限定のキャリア採用の求人の案内などの情報を回してもらえたりすることもありした。たいがいはあまり聞いたことがないような「外国の政府系金融機関の日本支店」というようなものが多かったです。
ところで私は個人的にリーマンショック真っただ中の頃に就職活動をしていましたので、隠れた氷河期世代として就職には非常に苦労しました。
思い出したくもないのですが、リーマン不況というのは、竹中平蔵が基調講演に来ては学生に向かって「みなさんのほとんどは将来負け組になります」みたいな話をするのを、ただひたすらありがたがって聞かなければならなかった時代でしたから・・・。寒気がしますね。
一方で、大学時代の授業で、さらに印象に残ったことがあります。
1000人もの聴講生がいてホールのようなところ行われた講義の中で、ある教授が学生に向かって、こんなことを言ったのでした。
「この中の半数ぐらいは、とくに女性であればこの中の7割の人は金融機関におそらく就職するでしょう」
私は、当初信じられませんでした。なぜ?もっと選択肢は多いはず。なぜ金融と決めつける?
理由は非常に簡単で、私がいたような専攻の学部生が対象であれば、あの不況の時でも文系の学生を大量採用している「まとも」と思われる企業が、金融しかなかったからです。そして女性は一般職や地域総合職枠であれば、リーマン不況であってもその採用枠をめぐる競争倍率はやや緩やかでした。もっともこの傾向は今もそこまで大きくは変わっていないと思います。
当時は、キャリアセンターに就活の相談に行っても、どこで就活の相談をしても、なぜか相手は私が「金融機関」への就職を希望していることを半ば前提として話をしてくるのです。
まるで「諦めろ、業界を選べる立場じゃないだろう」と言われているようでした。
すでにリクナビやマイナビの新卒求人は、ゼンショーグループやパチンコチェーンの募集しか出ていませんでした。
そこで、ハローワークの新卒向けの窓口に行ってみて、こんな風に相談してみたんですよ。
「私は、『人間らしく働ける仕事』と『ルーティーン作業だけじゃなく多少は、自由な裁量でできる仕事』と条件だけはどうしても譲れないんです。でも、今は本当に仕事がありません。大卒で、この最低限の条件さえ、目を瞑らなければ仕事は見つからないのでしょうか?」
当時はブラック企業全盛でもありましたから、求人票を見た段階でどう考えても人間らしく働ける会社じゃないなと分かる酷いものがゴロゴロありました。
するとハローワークの職員はこんな風に答えてくれました。
「その二つを十分なレベルでクリアできるとなると選択肢は狭まる、けれどその条件のうち一つだけはクリアできれば、もう一つについては妥協してもいいんじゃないか?」
との返答でした。
・・・・私、実はこれにも納得がいきませんでした。あらゆる条件を緩和して最後の最後に残ったこの二つの条件だったんです。「営業がやりたくない、経理がやりたい、残業はイヤ、サビ残ありえない」なんて、当時、口が裂けても言わなかったですよ・・・! というか、とても言える状況ではなかった・・・それで自分なりに考えに考えた挙句、最後に死守すべき条件を二つまで絞り込んだのです。しかしそれですら、半分を諦めろと言われてしまったのですから・・・今考えても、ちょっと異様な時代だったと思います。
この助言にしても、一見もっともに聞こえますが、私が提示した最低条件だって正しいはずと思ってました。
翻って、この頃の感覚であれば、あのリーマンショックの就職氷河期化であれば「銀行は良い就職先だった」という見方は全く正しかったと思われるかもしれません。
しかし、そうでもないんです。当時からすでに懐疑的だった人間はいまいした・・・私がそうでしたから。
選べる立場じゃないと分かっていても、金融系や営業職がやりたくないという本音を、当時、私は拙い言葉で大学の恩師にポロっと喋ってしまったかもしれません。
すると、大学の恩師はこう言ってくれました。
「金融に限らず、同じ職種の人間を大量採用している企業は、社員を個性で見て評価することが簡単じゃない。だから定量的な評価に頼らざるを得ないし、それによって働く側の社員は没個性的な仕事の中で厳しい競争を強いられる傾向がある」
そこで、私ははっと気付いたんです。金融業界や営業職に向いなさそうな自分は、もっと会社の中に多様性がある業界(私の場合は、より具体的にいうと製造業の管理部門の職種)が自分には合っていると。
その恩師は金融業界で山崎氏のような仕事をしていましたから、私の適性を見た上であまり金融業界に向いている人間ではないと判断した上でそのようなアドバイスをくださったのかもしれません。
キャリアセンターや、就職相談窓口では、当時の私の悩みや葛藤を本当にちゃんと聞いてくれる人は、残念ながら、いませんでした。
出口が見えず、悩み苦しむ毎日でした。
もちろん、人よりも長く、就職活動をする羽目になりました。最後の方などは、ほぼ絶望のどん底で正常な判断力さえも失いかけていました。
まぁその後色々ありましたが、最後まで希望は捨てず「譲れない二つの条件」も死守しきって、大手ではありませんが製造業の企業に経理として就職できました。
その後、経理としてキャリアを積むことができたことは満足しています。
あの時もし腹をくくって自らを偽り周りに流されて金融系に進んでいたら、または飲食やパチンコチェーンの求人に応募していたら・・・
体力も気力も適正ない自分はすぐズタボロになっていたことでしょう。
とはいえ銀行ならば若いうちは転職カードが使えるので結果は同じになるのかもしれません。
このような経験があるため、私も山崎氏同様に、少しでも葛藤を持っている後輩や若者の文系の学生がいれば、銀行はおすすめしません。金融に興味があっても金融知識は自分の資産を運用するために使い、仕事では会計や経理などをゆるくやって余力を残すのがこれからの時代には合った働き方だとすすめています。