どうモメンです。
経理の仕事をしていると簿記が分からない人にどう説明したらいいか苦労することがよくありますね。
経理をやっていうとどうやっても考え方が合理的・論理的になり、いわゆる日本的な場の空気を読んで妥協・忖度する物事の進め方に耐えられない時があるものです。
私も例外なくそれで苦労してきた人間なのでここは簿記が分からない人、論理的ではない人とのものの考え方の違いやそれに対処する方法など考察していきたいと思います。
経理の仕事は理屈っぽくていい
政治思想やイデオロギー、ワクチンや反ワクチン、陰謀論などは「何でも2項対立で捉えるな」が今はトレンドですが、それが「経理は論理的であるべきかどうか」、という命題となる場合は、もちろん論理的であるべきだと、きっぱり言えるかと思います。
ですので、経理の話をするときはあまり理屈っぽくなりすぎないようにとか、無駄に相手に気を使いすぎなくていいと思います。経理とはそもそもがロジックで成り立っているものですから。
「経理はコミュニケーションが大事」とよく言われるが
よく「適正経理とは何か」という議論の中で、利害関係だとか実務とのバランスを考えて、現場や関係部署とコミュニケーションを取って調整しながらやることが大事という話を聞きますが、そうしないとできない経理の仕事なんて今時ほぼ無いので心配はご無用です。
大会社で経理エリート人材としてキャリアを積む場合や、会計士や税理士になって独立してやっていくには、営業スキルが必要ですが、それはそういう市場の話であって経理が全てそうではないです。
簿記というワードは出してはいけない
簿記のボの字も口にしてはいけません。簿記と言った瞬間、「いわゆる工業高校で習うアレ」みたいな響きになってしまいます。
しかし思い返してください、簿記2級のあの難易度を。連結会計やリース、税効果会計までもを含むあのレベルの高さ、知らない人には到底、想像もできないでしょう。今時、MARCHクラスの大学生でさえヒーヒー言いながら4回目5回目でやっと受かるのも珍しくない、アレです。「いわゆる工業高校のアレ」では、もはや指すものと指されるものが釣り合いが取れません。。
ですので、簿記という言葉は使わずに「会計」や「財務」といいいましょう。同様に「仕訳」も、いまいちです。「借方・貸方」と言いましょう。
貸借対照表はBSと言いましょう。「工業簿記」なんてもってのほかです。絶対に「原価計算」と言いましょう。
いずれも共通するコツは「簿記は特殊技能のようなもの」という印象を与えないことです。法律などと同様にちゃんとした学問であって、真面目に勉強しないと理解できないのが会計なのだという雰囲気を出しましょう。
売上原価がわからない
よく複式簿記が分からない人が躓くのが、簿記を勉強した人なら全員知ってる「しーくりくりしー」で月末に計算する「売上原価」の算出ですね。
「売上原価または仕入勘定で、期首在庫を繰り入れて期末在庫を差し引く」と教わりますがが、これは複式簿記を前提として、貸借対照表と損益計算書をつなぐ仕訳を決算でするためそのような説明になるわけです。
簿記が分からない人は、いったい、何に何を繰り入れて、何から何を引くかはさっぱり分からないと思います。
「仕入原価に期首の在庫を足して、期末在庫を引く」と答えてもいいのですが、いつしか仕訳のBS側が切り取られて、「仕入に在庫の増減を足す」という計算式だけが、定着してしまったりします。
(ちなみに、この計算では「期末在庫」という概念を単独で使わないために、BSに計上される在庫の概念そのものが、ほぼ理解されません・・・)
本当は「しーくりくりしー」が正解なのですが、複式簿記が分からないと、なぜそんなまどろっこしい計算をしないといけないのか理解できないのです。
「要するに仕入額に在庫の増減を足せば売上原価が出るんでしょ」と、なります。そこで「そうです、そういうことです」と答えるか、「うーん厳密にはちょっと違うんですけどまぁそれでも間違いではないです」と答えるか、「複式簿記を勉強したほうがいいですよ」答えるかはあなた次第です。相手が学生なら「しーくりくりしーだよ!」と叫ぶでしょう。
これが仕入商品の計算ならまだいいんですが、製造業で、製品製造原価の計算で売上原価を算出する時に、工場の人間が考案したオリジナル計算式を適用するようになり、在庫の存在を無視された時には、どうなることかと、思いました。その問題点を上司に指摘するも話を理解してもらえなかった時にはもうオワタとさえ思いました。
結局その時は顧問税理士に相談し税理士に「それはマズいです」と指摘して修正をすることでなんとかなったのですが「それみたことか」と醒めた気持ちでした。結局上司がその後もなにがどうマズいか理解することもなく税理士に指摘されたから是正するしかないという考えしかなかったわけです。それ以来、私の話も多少は聞いてくれるようになりましたが。
貸借対照表と損益計算書の違い
損益計算書は、簿記が分からなくてもほぼ誰でも感覚的に、直観的に理解できるようです。
在庫と、売上原価の関係は、正攻法では「しーくりくりしー」で覚えるところを、「とにかく在庫増減を足せ!」という苦し紛れの説明で、なんとか覚えてもらえればなんとかなります。
問題は、では「貸借対照表とは何なのか?」の説明です。
私はこう説明します。金太郎飴を横から見たのが損益計算書で輪切りにしたものが貸借対照表です、と。
「実は簿記って立体構造なんです」と説明しトドメを刺しておく
もはや勉強しない相手に理解してもらう気はなくなりました。
せめて、ちゃんと勉強する気がない人に簿記がいかにそう甘いものではないか分かってもらうために、トドメを刺すことで溜飲が下がるというものです。
「損益計算は平面的ですけど、貸借対照表は立体なので、組み合わせの構造がなかなか分からない人が多いらしいですねぇははは」
と言っておきましょう。簿記の勉強は立体パズルのようなものを頭の中で組み立てる訓練をする必要があるのです。年を取ってからこの仕組みを改めて理解するのは相当難しいのだと思います。
頭が良いはずの、橋下徹が、複式簿記で財政を語るツイートを見かけたことがあるのですが、経理の人間が見たら「ん?」と思うような内容でした。何回読んでも、橋下氏が何を言ってるのかが理解できなかったのです・・・簿記会計を本当に知っている人間以外は、あっさり騙せたでしょうが。
逆に経理会計・また数字に強い経営者には、ただただ経理は平伏すしかありません・・・ほんの少しでも油断を見せれば秒殺されるでしょう。そういう会社の経理は、きっと大変ですよ。
借方や貸方、仕訳が分からんと言われたら
基本的には勉強していただくしかありません。
年配の方に勉強しろなどと、偉そうには言えませんが、でも自分が社長だったら絶対言うでしょう。いっちょまえになりたきゃ簿記勉強しろと。会社法、民法、商法、労働法、場合によっては憲法の知識だって知ってて損じゃないと思いますよ。
人間が人間らしく働けるとはどういうことかとか、いちいち憲法に照らして考える経営者がいたらさぞ人間ができている方でしょう。とても憧れます。
必要最低限の簿記会計知識がちゃんと身についていなければ、中小企業であっても、銀行と取引する場合や、それ相応の人とビジネスの話題は本当の意味で対等に扱われないと思います・・・。「これくらいの規模の会社なら、これぐらいの知見しかないだろう」という風に相手に露骨に足元を見られて相応案件を持ちかけてくるのが、経理から見ているとよく分かります。
幸い、今は安価で読みやすい教材は、無限にあります。勉強すると言っても、堅苦しい教科書とノートを広げてガリガリ勉強しなければいけないわけではなく、4コマ漫画で解説するものがあったり、アプリや、動画を見たりするだけで、いつでもどこでも知識は得られる時代です。
それをやらずに、簿記が理解できないのを、説明のやり方が下手だの、工夫がないだの、相手のせいにするなどというのは言語道断ですね。
会社で働いていると、勉強することに関心がない人間の方が多数派なのだなと思いますが、それで太刀打ちできない事象が経理界隈で起きた場合には、経理がドヤ顔で出しゃばるぐらいは、許されるはずです。
意外と社長の方が真面目に簿記勉強してる
尊大な上司より、社長の方が真面目に勉強してたりしますね・・・