どうモメンです。
豊洲市場移転問題で、コンコルド効果という経済用語が紹介されているのをSNSなどで見かけました。
いわく超音速旅客機コンコルドの商業的失敗に由来して、回収不可能になった事業に投資をし続けることを止められない状態を指すとウィキペディアには載っていました。
埋没原価とは
コンコルド効果は埋没原価のことを分かりやすく説明した経済用語というように紹介されていますが、コンコルド効果で埋没原価を説明するのはやや危険かもしれません。というのも会計財務用語でいう埋没原価は意味が違うんです。会計用語では管理会計で、二つの異なる代替案間で発生するコストが変わらないものに対して埋没原価という言葉を使いますが簿記1級ぐらいで登場するのでいずれにしても一般的ではない言葉ではあるのですが。まぁ「リスク」という言葉は、金融の世界では「不確実性」の意味になると指摘するぐらい野暮な話かもしれませんが。
会計では回収不可能になっている事業は、今の日本の会計基準では、回収可能性を厳正に判断した上で減損処理をしなければ、東芝のように粉飾決算扱いになります。
コンコルド効果のような「回収不可能になった事業に投資をし続けること」は、資金面がショートしてしまい継続企業の前提が崩れてしまいますから、いきつく先は、「倒産」となってしまいますので、こういう現象のことを差す場合には単に「赤字事業」と言った方がアカデミックな点からは正確だと思います。ここで「埋没費用」といったちょっとマニアックな用語を使うと経済学と会計学で意味が異なってしまったり混乱を招きかねないので注意が必要かもしれません。
新聞に出てくる会計の記事はデタラメ
大学で会計を学んでいた頃よく日経新聞の記者が書く会計の記事はデタラメと言われてるのを聞きましたが、当時会計の世界で大きな話題になっていた国際会計基準へのコンバージェンス・アドプションに関する記事は確かに間違いが多かったです。その典型例は「時価会計」という用語ですね。国際会計基準適用で、今まで簿価会計が認められてきたものが今後は時価会計になる、という説明ですが、部分的には合っているのですが、国際会計基準は決して時価会計であるとは言えませんがそのような印象を世間に強調したくて時価会計という言葉を新聞記者があえて好んで使っているようでした。
新聞記者は経済学畑や金融畑の人材は沢山いるのでしょうが会計学畑が少ないのかもしれません。世間では弁護士や証券アナリストと同じように会計士は権威職なのに、新聞記者の採用に関しては、会計畑の人間をより軽んじる傾向があるのでしょうか。たとえば、同じ大学なら経済学専攻の学生の方を優遇するといったように・・・東芝の問題についても「監査法人の能力不足」の問題を指摘するマスメディアが少なかったのはとても残念でした。決して東芝の肩を持つわけではないですが・・・あの問題については真実は一つではないと思います。監査法人だってミスは犯しているんですがそれを指摘できる知識を持った記者がいないようなのです。
新聞の会計を扱った記事は眉唾なものが混じっています。
こんな私モメンもかつては少し新聞記者に憧れを持っていたことがあり、今はブログを通じて自分の見たもの、考えたことを発信できる機会を得られたことは嬉しい限りですね。
普段は株主優待やら仕事あれこれやガジェットネタを中心に書いていますが、たまには硬派な記事も織り交ぜていきたいと思います。